木工塗料 塗装仕様の組み合わせ実験

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木工用塗料の仕様のルール

木工の塗装において重要なポイントはいくつかありますが、

基本的なことに「下塗りと上塗りの塗料を同じ性質の塗料で統一すること」というものがあります。

ラッカー塗料を下塗りに塗れば、上塗りも同じラッカー塗料にする。
水性ウレタン塗料を下塗りに塗れば、上塗りも同じ水性ウレタン塗料にする。

同じ性質の塗料を塗ることが、塗膜の性能を保証する上で重要なルールとなります。

もし、違った性質の塗料を使った場合、下の塗膜が縮んだり、密着が悪くはがれてしまったりとトラブルが起きる可能性が高くなります。

しかし、塗り替えの現場などでどうしても以前に塗られた塗料とは、違った性質の塗料を塗らなければならないという状況が出てくることがあります。

そこで、実際に「下塗りと上塗りに違う性質の塗料を組み合わせたらどのような現象が起きるのか」をまとめて検証してみたいと思います。

 

実験の内容

今回、下塗りとして用意する木工用塗料は

  1. 水性アクリルウレタン塗料(使用材料:玄々化学工業 Elf木部内装用SC45)
  2. ラッカーサンジング塗料(使用材料:玄々化学工業 ピュアラッカーサンジングLS16P)
  3. 1液ポリウレタン塗料(使用材料:玄々化学工業 フロアーユートンGC11)
  4. 2液ウレタンサンジング塗料(使用材料:玄々化学工業 ピュアサンジングUC35P)
  5. 自然塗料(使用材料:オスモ カントリーカラー)

これらを1枚の板にそれぞれ塗っていきます。

まず下塗りを1回塗った板がこちらです。

その板を4つの部分に分けて、
1液ウレタン、2液ウレタン、水性ウレタン、ラッカーと
4種類の塗料を塗っていきます。
密着をよくするために、粒度320のペーパーでやすり掛けをして上塗り塗料を塗っていきます。

上塗り塗料を塗ったものがこちらです。

組み合わせとして以下のものとなります。

下塗り上塗り
1液ウレタン2液ウレタン
1液ウレタンラッカー
1液ウレタン水性ウレタン
2液ウレタン1液ウレタン
2液ウレタンラッカー
2液ウレタン水性ウレタン
ラッカー1液ウレタン
ラッカー2液ウレタン
ラッカー水性ウレタン
水性ウレタン1液ウレタン
水性ウレタン2液ウレタン
水性ウレタンラッカー
オスモ1液ウレタン
オスモ2液ウレタン
オスモ水性ウレタン
オスモラッカー

使用する上塗り塗料は以下のものです。

1:水性アクリルウレタン塗料(使用材料:玄々化学工業 Elf木部内装用SC45)

2:ニトロセルロースラッカー塗料(使用材料:玄々化学工業 ピュアラッカークリヤーLC70P)

3:1液ポリウレタン塗料(使用材料:玄々化学工業 フロアーユートンGC11)

4:2液ポリウレタン塗料(使用材料:玄々化学工業 ピュアクリヤーUC33P)


検証する内容は、

1:上塗りの塗膜が下塗りの塗膜に密着しているか確かめる。
  (塗膜にカッターで傷をつけた後、セロハンテープを貼ってからはがす方法で確認)

2:下塗りの塗膜が上塗りの塗膜によって縮みや変色など何か影響が起きていないか確かめる。

 

検証結果

①下塗り 1液ウレタン(GC11) 上塗り 2液ウレタン(UC33P)

塗る前の予想塗った後の様子
1液ウレタンは油変性塗料であり、油の性質があるので違う上塗りを塗ると弾いてしまい密着しないのではないか。
また、2液ウレタンの方が溶剤が強いので下塗りの1液ウレタンが縮んでしまうのではないか。
塗膜の縮みは今のところ見られない。密着テストをした限りでは、剥がれは起きなかった。

②下塗り 1液ウレタン(GC11) 上塗り ラッカー(LC70P)

塗る前の予想塗った後の様子
1液ウレタンは油変性塗料であり、油の性質があるので違う上塗りを塗ると弾いてしまい密着しないのではないか。
また、ラッカーの方が強い溶剤なので下塗りの1液ウレタンが縮んでしまうのではないか。
塗膜の縮みはなし 密着テストをすると一部剥がれてきた

③下塗り 1液ウレタン(GC11) 上塗り 水性ウレタン(SC45)

塗る前の予想塗った後の様子
1液ウレタンは油変性塗料であり、油の性質があるので違う上塗りを塗ると弾いてしまい密着しないのではないか。塗膜の縮みはなし 密着テストをするとうっすら剥がれている様子

④下塗り 2液ウレタン(US35P) 上塗り 1液ウレタン(GC11)

塗る前の予想塗った後の様子
ペーパー研磨で下地の食いつきをよくすれば何とか密着するのではないか下塗りの縮みはなし、見たところ密着はしている様子。
密着試験をすると剥がれた

⑤下塗り 2液ウレタン(US35P) 上塗り ラッカー(LC70P)

塗る前の予想塗った後の様子
ペーパー研磨で下地の食いつきをよくすれば何とか密着するのではないか下塗りの縮みはなし、見たところ密着はしている様子。

⑥下塗り 2液ウレタン(US35P) 上塗り 水性ウレタン(SC45)

塗る前の予想塗った後の様子
ペーパー研磨で下地の食いつきをよくすれば何とか密着するのではないか下塗り塗膜の縮みはなし、見たところ密着はしている様子。

⑦下塗り ラッカー(LS16P) 上塗り 1液ウレタン(GC11)

塗る前の予想塗った後の様子
ペーパー研磨で下地の食いつきをよくすれば何とか密着するのではないか下塗りの縮みはなし、密着テストでは、割と大きめに塗膜が剥がれた

⑧下塗り ラッカー(LS16P) 上塗り 2液ウレタン(UC33P)

塗る前の予想塗った後の様子
2液ウレタンの方がラッカーより溶剤が強いので、下塗りのラッカーが縮んでしまうのではないか下塗りの縮みはかすかにあり、密着テストでは、細かく塗膜が剥がれた

⑨下塗り ラッカー(LS16P) 上塗り 水性ウレタン(SC45)

塗る前の予想塗った後の様子
ペーパー研磨で下地の食いつきをよくすれば何とか密着するのではないか下塗りの縮みはなし、密着テストでは剥離は起きなかった

⑩下塗り 水性ウレタン(SC45) 上塗り 1液ウレタン(GC11)

塗る前の予想塗った後の様子
ペーパー研磨で下地の食いつきをよくすれば何とか密着するのではないか下塗りに波打ったような縮みが発生。密着テストでは一応くっついている様子

⑪下塗り 水性ウレタン(SC45) 上塗り 2液ウレタン(UC33P)

塗る前の予想塗った後の様子
2液ウレタンの方が水性ウレタンより溶剤が強いので、下塗りの水性ウレタンが縮んでしまうのではないか下塗りに波打ったような縮みが発生。密着テストでは一応くっついている様子

⑫下塗り 水性ウレタン(SC45) 上塗り ラッカー(LC70P)

塗る前の予想塗った後の様子
ラッカーの方が水性ウレタンより溶剤が強いので、下塗りの水性ウレタンが縮んでしまうのではないか塗膜に多少のざらつきが細かく縮みが起きている模様。密着テストでは一応くっついている様子

⑬下塗り オスモ  上塗り 1液ウレタン 

塗る前の予想塗った後の様子
オスモカラーはひまわり油主体の塗料であるため、違う上塗りを塗ると弾いてしまい密着しないのではないか。塗膜の縮みはなし。触った感じがザラザラになっているが、うっすらクリヤーの膜がかかっている様子。密着テストでは一部剥離が見られた

⑭下塗り オスモ  上塗り 2液ウレタン

塗る前の予想塗った後の様子
オスモカラーはひまわり油主体の塗料であるため、違う上塗りを塗ると弾いてしまい密着しないのではないか。2液ウレタンは溶剤が強いが、オスモは塗膜を作らないため縮む心配はなさそう。塗膜の縮みはなし。触った感じがザラザラになっているが、うっすらクリヤーの膜がかかっている様子。密着テストでは剥がれなし。

⑮下塗り オスモ  上塗り 水性ウレタン

塗る前の予想塗った後の様子
オスモカラーはひまわり油主体の塗料であるため、違う上塗りを塗ると弾いてしまい密着しないのではないか。塗膜が吸い込んだようになっていて、触った感じがザラザラになっている。密着テストでは剥がれなし。

⑯下塗り オスモ  上塗り ラッカー

塗る前の予想塗った後の様子
オスモカラーはひまわり油主体の塗料であるため、違う上塗りを塗ると弾いてしまい密着しないのではないか。ラッカーは溶剤が強いが、オスモは塗膜を作らないため縮む心配はなさそう。塗膜が吸い込んだようになっていて、触った感じがザラザラになっている。密着テストでは剥がれなし。

以上のような結果となりました。

結果として分かるところは、水性や1液ウレタンなどの弱めの溶剤に2液ウレタンやラッカーなどの強い溶剤を塗り重ねると、塗膜の縮みが起きてしまうこと。
逆に、2液ウレタンやラッカーの上に水性や1液ウレタンを塗ると、一応密着はするようです。

ちなみに溶剤の強さは

2液ウレタン > ラッカー > 1液ウレタン > 水性ウレタンの 順になります。

ただ、見たところ何とか密着しているようなところも、時間の経過とともに剝がれてしまうかもしれません。
やはり塗り替えであるとしても、同じ性質の塗料で塗った方が間違いなさそうです。

現場での条件によって結果は変わっていきますので、そこは留意のほど宜しくお願いします!

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