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塗料における下地調整の重要性
塗料を塗る際に最も重要といって良いのが、下地の処理です。
塗料は金属、木部、プラスチック、セメント、コンクリートなど様々な下地に塗ることができますが、その時に必ずそれぞれの下地にどのように塗装をするかを考える必要があります。
考える点は以下のようなものです。
- 下地の強度
- 下地との密着性
- 初めて塗装するのか、塗り替えなのか
1:下地の強度
塗装をしたとしても下地が弱ければ性能は発揮できません。たとえばALC 板などは 塗装する前は細かな気泡がありますし、木部にも細かな繊維の穴があります。金属面は錆止めを塗らなければ塗装をしたとしてもじきに錆びてしまいます。
人がお化粧をするように、塗装する下地のもノリをよくするフィラーという下地調整材で穴埋めをしたり、目止め材で木部の繊維の穴を埋めたり、金属には錆止めをして錆の発生を防ぐという処理が必要となります。
2:下地との密着性
いくら品質の高い塗料を塗ったとしても、下地とうまくくっつかなければ、期待された性能は発揮されず、はがれてしまったり膨れてしまったりと散々な結果になってしまいます。
塗料はそれぞれの下地に応じた処理方法や下塗り材などがあります。
下地処理には、金属ではさび落としをして錆止め材を塗る。
木部にはサンドペーパーで表面を目荒らしして食いつきをよくする。
コンクリートなどのセメント系下地にはアルカリ性のアク止めやつるつるした下地に密着するような下塗り材を塗るなどの処理があります。
塗料メーカーの発行する製品説明書やカタログなどにはそれぞれの下地に合わせた塗装方法が書いてあることが多いので、これを参考にするとよいですね。
3:初めて塗装するのか、塗り替えなのか
その下地に初めて塗装するのであれば、メーカーの提案する仕様通りに塗装すればまず問題はありません。
しかし、以前に塗装した部分や年月が経って下地が劣化した部分がある場合は、その状態に合わせた下地処理が重要になってきます。
塗装した部分が十分にくっついていれば問題ないですが、例えば剥がれかかっている場合は、塗装前にあらかじめ剥がしておくことが必要となってきます。
また下地が劣化して表面がぼそぼそして荒れてきたりした場合には、下地を補強するような下塗り材を塗装します。
以上、簡単に説明しましたが、塗料には下地の種類と同じだけの下地調整方法があります。全て覚えるのは大変で経験と知識が必要となってきますが、ただ塗るだけで終わりではない奥深さが塗料にはあるということですね。
どのような下地があるの?代表例
<木材への塗装>
木材へ塗装する場合には、表面の凸凹を平らにならすことと密着性をよくするために、必ずサンドペーパーで目荒らしをする必要があります。
最初は密着性を上げたために粗い目のペーパーで目荒らしをし、塗装のたびにペーパー掛けをし、表面磨きをします。
最後は毛羽を取るのと表面をツルツルさせるために細かい目のサンドペーパで研磨します。
広葉樹など導管が深く吸い込みが大きい場合は目止め剤を、ヤニが多く出る木材の場合にはヤニ止めシーラーを塗ります。
<金属の場合>
金属は様々な種類がありますが、基本は錆止め塗料を塗って上塗りをかけます。金属がすでに錆びてしまっている場合は、研磨を行って錆落としをします。
ステンレスやアルミ、亜鉛メッキなどは場合によっては密着できない錆止め塗料もありますので、カタログを見て塗装対象か確認するとよいでしょう。
<コンクリートの場合>
段差や不陸などある場合は、セメントフィラーで表面を平らにならします。
そのあとに、コンクリートと塗料との密着力向上、アルカリ分のアク止めのために下塗り材のシーラーを塗装します。
<石膏ボードの場合>
溝やビス止めの穴、段差などをパテでしごき埋めていきます。表面を平らにしたのちに、水性のアルカリシーラーで下塗りをします。
<窯業系サイディングの場合>
窯業サイディングを塗装する場合は塗り替えの場合がほとんどとなります。
サイディングの劣化具合によって使われる下塗り材が変わります。
劣化が軽度であれば、水性カチオンシーラーや1液弱溶剤エポキシシーラーなどがよく使われます。
劣化がひどい場合は下地を補強する必要がありますので、厚みをつけられるサフェーサーと呼ばれる下塗り材を塗っていきます。
窯業系サイディングは蓄熱性が高く通気性の悪いサフェーサーを塗ると膨れる可能性がありますので、必ずサイディング専用のサフェーサーを使う必要があります。
(対応商品:スズカファインWBリメークサーフEPO エスケー化研水性SDサーフエポプレミアムなど)
また、最近では汚れにくくするために特殊なクリヤーでコーティングされたサイディングがありますが塗料の密着が大変悪いため、この場合は難密着面対応シーラーを塗る必要があります。
(対応商品:スズカファインWBグリップシーラーEPO エスケー化研ハイブリッドシーラーEPOなど)
<プラスチックの場合>
プラスチックはそのままでは密着性が悪いために、必ずペーパーにて目荒らしをします。そのあとにプラスチック用プライマーを塗ってから塗装をします。
プラスチック専用塗料を塗る場合はプライマーが不要なのでそのまま上塗りをしても大丈夫です。
プラスチックは色々な種類があり、素材によって塗装できるかできないか事前に確認する必要があります。
プラスチックへの塗装は、プラモデルなどに多いですが、プロモデルに使われる素材はPS (ポリスチレン) やABS樹脂などがよく使われます。
PE(ポリエチレン)などは塗装の密着が悪いため、プラスチック用塗料でうまく塗ることはできないので避けた方がよいでしょう。